(以下は閉鎖された「みんなの挑戦日記」で連載していたものを転記したものです)
私:「もしもし、エコファームアサノさんの窓口はこちらでよろしいのでしょうか?」
GOENさん:「はい、そうです。」
私:「あのぉ、つかぬことをお伺いしますが農業研修というのは受け入れていらっしゃらないでしょうか?」
GOENさん「え、いや、どうなんでしょう。今は研修生というのはいないのですが。とりあえず一度いらっしゃって浅野とお話していただいたほうがいいのではないですか?」
私:「え、行ってもいいんですか?」
未来の扉が開いたと思った。体が小刻みに震えていた。
──
早朝に家庭菜園に行ってから出社する生活はもう1年も続いていた。夜型人間だった私の朝型生活がこうも続くと自分の天職というものについて考えるようになった。
このころ会社では、自分が入社した理由でもある事業をたたむことになり、やりたいことがない宙ぶらりんな状態になってしまっていた。宙ぶらりんな状態では仕事に身が入らず、ブログやニュースサイトをめぐってばかりいた。
そのなかでもよく読んでいた以下の4つのブログには強く影響を受けた。
・Life is Beautiful
・住みたいところに住めるおれ
・池田信夫ブログ
・山本直人ブログ
どれもキャリアの築き方や働き方についての記事が多く(特に上の2つはソフトウェアエンジニアなら必ず読むべき)多くのことを教えてもらったが、最も意識するようになったのは自分の天職についてだ。
はたから見ると大変そうに見えることでも本人は別に大変ではない、それが天職だ。とはLife is Beautifulの
中島さんの言葉だが、これは1年以上続いている自分の早朝家庭菜園とおもいっきりかぶっていた。いろんな人からよくそんなこと出来るねと言われていたが、やっている本人は全く苦痛でなく毎日それが楽しみだった。
加えて強く影響を受けたのが山本直人さんのブログの「見切りとがんばり」だった。このころ、ソフトウェアエンジニアとして必要な好奇心と能力について自分よりも数段優秀な後輩と仕事をする機会があり、エンジニアとしての適性に限界を感じていたところだった。嫌いではないのだが寝食を忘れるほど好きではないのだ。そんな私とコピーライターとしての能力・適性に見切りをつけて元々好きだった分析の分野でがんばることにした山本直人さんは山本さんの当時30歳という年齢もそうだが全くかぶっていた。
自分の天職とはなんなのか、もう答えは出ているのではないか・・・。
また、農業に関してははっきりとやりたい事業があった。それはレストラン向けに作られている野菜を家庭でも食べれるようにすることだ。中野さんのところにいって野菜をまるかじりしていると、なぜこれを家で毎日食べれないのかと不思議に思うのだ。まるかじりでおいしいのだから料理が簡単でいいということ。この野菜は家庭にこそ広まるべきだ!勝手にそう思っていた。
そんなことを思いながら悶々としていた9月のある日、父から、ずっと人に貸していた実家が空くことになった、転勤先から戻るまでの2年くらいはもう人に貸すことはないという連絡があった。
もう直感した。
ここだ!おそらくここしかない!
ここを逃すとキャリアを変えるチャンスはもうない!
父との電話が終わるとそのままMacに向かい実家がある千葉県のおもしろい農家さんを検索する。すると、なんと中野さんと同じようにレストラン向けにやっている農家さんで日本で最先端を行っている方が実家から車で通える距離にいるではないか。シェフズガーデン エコファームアサノというらしい。・・・その農場主の浅野さんの風貌はだいぶインパクトがあり仙人のようだが、情熱大陸などにも出たことがあるらしい。
そんなすごい人が通える距離にいるなんて!もうここしかないでしょう!(注 エコファームアサノが研修を受け付けている保証はない)と、はやる気持ちを抑えて妻に相談した。一応私も常識人であったようで、興奮しながらも妻に相談するという選択肢が頭にあったようだ。
私「実家に帰って農業研修をするっていう選択もあると思うんだけどどう思う?」
妻「やるなら早くしてくれない?」
同じ変わった大学出身の妻は、安定した上場企業の会社員からたぶん数年は無収入になるかもしれない農業への転身にも関わらず、即答だった(笑)。2秒後、エコファームアサノの窓口というGOENという会社に電話。エコファームアサノの浅野悦男さんをなかば押しかけで訪ねることになった。
2010年9月のことである。